最後から二番目の真実

主にミステリの感想

ニッポン硬貨の謎

ニッポン硬貨の謎ニッポン硬貨の謎
(2005/06/30)
北村 薫

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エラリー・クイーン(二人の合同ペンネームではなく、あくまで名探偵で推理小説家の)が日本を訪れた際に遭遇した事件を書いた未発表長編「ニッポン硬貨の謎」を北村薫が翻訳したという設定の長編。ただ、現実のエラリー・クイーンとの重ねあわせや「五十円玉二十枚の謎」との絡みもあり、構造が結構ややこしい作品。

一九七七年、ミステリ作家でもある名探偵エラリー・クイーンが出版社の招きで来日し、公式日程をこなすかたわら東京に発生していた幼児連続殺害事件に興味を持つ。同じ頃、大学のミステリ研究会に所属する小町奈々子は、アルバイト先の書店で、五十円玉二十枚を「千円札に両替してくれ」と頼む男に遭遇していた。奈々子はファンの集い「エラリー・クイーン氏を囲む会」に出席し、『シャム双子の謎』論を披露するなど大活躍。クイーン氏の知遇を得て、都内観光のガイドをすることに。出かけた動物園で幼児誘拐の現場に行き合わせたことから、名探偵エラリーの慧眼が先の事件との関連を見出して…。敬愛してやまない本格ミステリの巨匠EQの遺稿を翻訳したという体裁で描かれる『ニッポン硬貨の謎』The Japanese Nickel Mysteryが、十余年の歳月を経て堂々完成。アメリカの作家にして名探偵が日本の難事件をみごと解決する、華麗なるパスティーシュの世界。エラリー・クイーン生誕百年記念出版。

クイーン論(シャム双子の謎論というべきか)を入れ込み、クイーンに捧げる作品でありながら楽しみながら書いている北村氏の様子が浮かぶ。あくまで北村訳のクイーン作品という体裁なのでそれほど翻訳調ではないものの所々にそれらしいフレーズが入ってきているのでクイーンらしさもきちんとします。ただ、ミステリ、それも本格ミステリの要素が少々薄い。これがイマイチ乗り切れない原因だろうか?

クイーン愛なら百点。クイーン論でも九十点。本格としては七十点。