最後から二番目の真実

主にミステリの感想

完全恋愛 -牧薩次

完全恋愛

完全恋愛

大筋は戦後美術史に残る大家本庄究の隠れた恋愛物語。
ただ、そこにはタイトルの通り「誰にも存在が知られない完全恋愛」が存在している

タイトルにあるとおり「完全恋愛」が主題なのだが、そのタイトルのせいで読者にはすぐに「完全恋愛」がバレてしまう。しかし恋愛を縦糸に、本庄究の周りに起きる殺人事件を横糸に進んでいくことで最後まで一気に読んでしまう。そう、殺人事件の謎解きもまたすばらしかった。

3つの事件が起こるのだが特に第一の事件が非常に練られおり早々に真相が暴かれえるのが勿体無いほどだ。ただ、完全恋愛のためにはここで早く真相を描いておく必要があるので仕方ないか。

第2、第3の事件はその真相よりもその事件を起こしたWhyの部分が良くできている。この真相開示の部分に自分はうるっと来た。なかなか感動的でしばらくぶりの傑作がきたな、と思った。

しかし、最後の最後のシーンでもうぼろ泣き。分かっていてもこれは泣ける。ミステリではここ十年に無い傑作恋愛ミステリではないか、完全恋愛を成し遂げたあの人の「献身」はあまりに美しい。なかなかこんな美しい恋愛譚は生まれない。10年に1冊の傑作であると言いたい。


しかもこの作品を「牧 薩次」名義で上梓した辻真先はすばらしい。感動をより倍増させる後書きに、もうこの作品にあるいくらかの瑕疵を指摘することは出来ないと感じた。

傑作ミステリを読みたいなら今すぐ本屋に走るべき。