最後から二番目の真実

主にミステリの感想

アルキメデスは手を汚さない -小峰元  良いものはいつまでも良いもの

アルキメデスは手を汚さない (講談社文庫)

アルキメデスは手を汚さない (講談社文庫)


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アルキメデス」という不可解な言葉だけを残して、女子高生・美雪は絶命。さらにクラスメートが教室で毒殺未遂に倒れ、行方不明者も出て、学内は騒然! 大人たちも巻き込んだミステリアスな事件の真相は? 70'年代の学園を舞台に、若者の友情と反抗を描く伝説の青春ミステリー。江戸川乱歩賞受賞作 (講談社文庫裏表紙より)


 まず、「復刊のための解説」が良かった。読後のもやもやとした言葉にならない感想がびしっと書かれている。この「そうそうこんな感じだった」と思えるのは気の合う友人としゃべっているようで気持ちがいい。


 肝心の中身は青春ミステリの手本のような「反抗・友情・おまけに謎」。正直ミステリ的な部分は薄くあくまで本題の青春悪漢小説を引き立てるための役割に徹しています。そしてなによりこの作品が賞賛されるべきなのは青春悪漢小説であるという部分にあります。

 
 ハッキリ言えば高校生の非常識で不愉快なまでの行いが起こした事件を大人たちが理解しようとしていく中で、自分含め読者も作中の高校生を理解していく事に重心が置かれている。その過程で高校生達の「悪漢」ぶりを楽しみながら、自分の高校時代等と比較して「当時とは変わったなぁ」「いやいや変わってないよ」と考えていくところまで楽しめる。


 自分は正直「30年前だろうと若者の本質的な部分は特に変わらないな」と思いました。弁当の競り市を開いたり株に手を出すやつもいれば、一方で社会に反発をして自分たちなりの行動を広げていくやつもいる。表面的な部分ですら余り変わっていないし、ましてその中身、潔癖だったり嫉妬を知らぬ間にしていたり、はたまた大人に反発する性格だったり。これほど変わっていないのだと思わせる作者も凄腕でこの「悪漢」達の行動を嫌ったり応援したりしていると「上手く乗せられているな」と。


江戸川乱歩賞受賞者は新人らしからぬ巧者ばかりのイメージですが、この作品もやはり新人とはいえないほど上手い。人間が一人一人生きていると思わせる力強さがある。