最後から二番目の真実

主にミステリの感想

探偵小説は「セカイ」と遭遇した -笠井潔

探偵小説は「セカイ」と遭遇した

探偵小説は「セカイ」と遭遇した

とりあえず購入&1/5ほど読みました。

ざっと現時点での感想は賛成半分、反対半分といったところ。例えば「はじめに」で脱格系を認めない本格界隈はいずれ滅びる、と書かれていますが自分はこれには同意できません。ただ、不断に危機意識を持つべきであるという意見には賛成です。これは「容疑者Xの献身」で露呈した問題点(ホームレスを見れない視野狭窄な時代性)を笠井氏と自分が共有しているからでしょう。


 上記の問題点から生じるモノは「見たいものだけ見る」という傲慢ではないでしょうか? (ホームレスなど)見たくないものを見ない人達に向けた作品はいずれもっと狭い範囲に向けた作品を生むでしょう。その果てにあるのはより小さいパイ、より小さいパイへと続く無限小への収束が待っているだけです。 実感としては本格推理小説とはもともと小さなパイだと感じます。しかし、そのパイを広げる努力を怠らなかったからこそ新本格ブームが起こりえたのだと思います。自分の好きな本格がこのような無限小へと収束していく事は勘弁願いたい。そのためには不断に危機感を持って「本格とは何ぞや」と問いかける人は応援したい。


 しかし、極力拡散も避けてほしい。パイを広げる努力の果てにあるのがジャンルの拡散ではこれまた悲しい。本格のようなそうでないようなものしか残らないのではちょっと…… 脱格系の台頭はこの拡散を象徴しているように自分は思っています。ですからここで笠井氏との齟齬が生じ、単純にうなずくことができません。この先はこの点に注目して読んでいきたいと思います。


ところでこの装丁、カバーを外したほうがかっこいいです。