最後から二番目の真実

主にミステリの感想

十字架クロスワードの殺人 -柄刀一 読了


f:id:pucci2486:20090127220244j:image

中畑さんに預けられた遺産を受け取ろうとする龍之介だが遺産は既に中畑さんの息子中畑大河によって横領されていた。しかし大河が横領した遺産で支払ったはずの借金はなくなっていなかった。詐欺にあったのだ。龍之介一行は遺産を取り返すために調査に乗り出し、静岡の資産家比留間家に向かう。その後龍之介、光章と一美は別々の場所で殺人事件に遭遇する。

なかなか複雑に事態が運ぶ龍之介シリーズ初の長編。クロスワードがテーマですが、その要素は余り大きくなく(章題に使われている程度で作中のクロスワードは既に解かれています)、むしろクロスワードの肝の「クロス」、交差するという点に比重が置かれています。

前回の「幽霊船が消えるまで」や「殺意は幽霊館から」などから見られる、このシリーズの特徴である「物理トリック」は今作でもバッチリ楽しめます。美希風シリーズでの文章と違って軽く、読みやすい文章で作中から受ける印象からも若者に届くように書かれていると感じました。

今回は磁石によるキーチップの探し方や、窓から見えた手首、といったトリックに関係してくるものから自作ラジオや石鹸の作りかた、といったものまで豊富な物理トリック、物理ネタが楽しめます。ストーリーもきちんきちんと進み今回でどうやら遺産は受け取れることになったようです。

全体に柄刀氏らしい丁寧さと読みやすさを考えた文章はすばらしく、物理ネタも意外性があり、量的にも満足。非常にレベルが高くまとまっている作品だと思います。