最後から二番目の真実

主にミステリの感想

サタンの僧院 -柄刀一

サタンの僧院

サタンの僧院


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誰も近づけなかったはずの時鐘塔には、死後数時間を経た死体がぶら下がり、あやしげな自称“聖者”は衆人環視の下、誰もいないはずの背後から刺されて死んだ…。また、七百年前に惨殺された、“龍に魅入られた”美姉妹の伝説…。一人は誰も立ち入ることのできない塔の窓から巨人につまみ出されて墜落死、もう一人は巨人の指に突かれて圧死したという。巨大な謎の迷宮の影を手繰るのは、神の奇跡に挑戦し復活を予言して首を落とされた“緑の僧正”なのか。気鋭が問う、奇想と論理極まる長編本格ミステリ。(amazonより引用)

後に「奇蹟審問官アーサー」で主役を張るアーサー・クレメンスの初登場作。彼に弟の甲斐・クレメンスがいたなんて、後の作品には全然出てこないので驚きました。


「キリスト教の信仰」、「ガウェイン卿と緑の騎士」、「奇蹟」を軸に息苦しいほどの迫力を持って描写される不思議な殺人事件。その迫力に圧倒されます。当時の柄刀氏はデビュー直後と言うことなのでかなりの力を入れてこの作品を書き上げたのでしょう。宗教や歴史の下調べやその組み合わせ方にかなりの努力を見ることが出来ます。



まだこの頃は「奇蹟審問官」ではないせいか殺人事件へのアーサーの関わりは淡白で信仰への問いかけとは分離していますが、それを違和感とは思わせないほどストーリーが良く練られています。


ビショップ・トレディと緑の騎士は当初から同一視されるのですが、そのためには体格の違いや首を切られながらも生きていた事を説明しなければいけない。そのネタ自体はすぐに想像がつくのですが切られた首から血が噴出することを説明できない。こういったあと一息で真相に到達できるのに出来ない、楽しい悔しさをあちこちで味わえ良かったです