最後から二番目の真実

主にミステリの感想

神国崩壊―探偵府と四つの奇譚 -獅子宮敏彦

中原に君臨する華王朝の都は、紫京と呼ばれている―。その宮城で皇帝の側近が殺された。「歴史から消された出来事」をまとめたある「禁書」が原因らしい。そこには、とうてい人の業とも思われない不可思議な出来事がつづられていた。生死を司る神の水、城壁をすり抜ける軍隊、消失した都市、誰もいなくなった島―。これらを読み解くことで側近殺人事件の真相が見抜けるというのだが…。俊英が挑む、創元推理短編賞受賞作を含む「奇蹟」の連作ミステリー。(amazonより引用)

4つの短編からなる第2章を第1章と第3章で挟み込んだ形式の短編集。

4つの短編はどれも非常に面白い。シンプルな着想からそれに合った舞台を生み出し、とんでもない奇想を実現させる手腕は他の作家には無い、獅子宮氏独自のものだ。


特に「マテンドーラの戦い」でのぶっ飛んだ城砦への侵入方法はすばらしい。もっと手前に崩落防止の支えがいるとか、ぶっ飛びすぎて一瞬トリックが理解できない(城壁に並行ではなく垂直に作ったのかと勘違いをした)とかその辺りに文句も付けられるし、ラストは少々感傷的に過ぎる気もするもののトリック一つで全てを帳消しにしてもお釣りが出るくらいナイストリック。


他の3篇も出来が良い。トリックそのものはシンプルなもののそれを最大限に生かす舞台づくりの手腕で最高の一品に仕上げている。そのためそれら3篇をサンドウィッチした第1、3章の出来が悔やまれる。


探偵小説としての収まりと次作へのつなぎとしての効果を目論んだのだろうが少々拍子抜けのネタや安易に過ぎるキャラクターの造形はちょっとなんとも安っぽい。短編も安っぽいといえばそうなのだが……


とはいえ今年のベスト10をにぎわしてくれそうで楽しみ。