最後から二番目の真実

主にミステリの感想

赤い霧 -ポール・アルテ

赤い霧 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

赤い霧 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

1887年英国。ブラックフィールド村に、『デイリー・テレグラフ』の記者と名乗る男が十年振りに帰郷する。昔、この村で起こった密室殺人事件を、正体を隠して調べ直そうというのだ。十年前、娘の誕生日に手品を披露する予定だった父親が、カーテンで仕切られた密室状態の部屋で、何故か背中を刺されて死んでいた。当時の関係者の協力を得て事件を再調査するうちに新たな殺人事件が起こり…。奇怪極まる密室殺人と犯罪史上最も悪名高い連続殺人を融合させ、“フランスのディクスン・カー”と評される著者が偏愛して止まない冒険小説大賞受賞作。(amazonより引用)

イギリスの田舎町で起こる連続殺人事件を描く前半部とロンドンでの切り裂きジャック事件を描く後半部からなる快作。


前半での如何にも何かありそうな主人公にこれまたアメリカで現在は行方不明の人物。この二人はもしかして……、と思わせぶりな書き方が上手いミスリードになっている。やたら複雑な演技を強いられることになった主人公に同情したり、降って湧いたようなラブロマンスや一癖ありそうな館の主人(故人)の調査にと読者の興味を引き付ける手腕は相変わらず。
あからさまなミスリードに「まさかこんなオチじゃぁ」と思わせておいて予想外の方向から衝撃が来たのは良かった。期待以上。密室トリックは「第四の扉」同様シンプルなものですがその生かし方が上手い。有名な奇術ネタを如何に上手く隠すかがこの人の持ち味なんだろうと思います。


物語の中盤で早くも田舎町の事件は解決してしまう辺りせっかちな読者でも驚くのですが、その後スムーズに切り裂きジャック事件に移り雰囲気も変わっていきます。この辺りの処理はまだこなれていない印象ですが、10ページも読めば後半の雰囲気にも慣れてきます。サプライズとして世界一有名な探偵がちょこっと出てきますがこれはあくまでサービスですね。この辺りからもどこか新本格の作家さんのように感じてしまいます。


最後、なぜこの物語が主人公の手記形式なのかが明らかになって終わるわけですが、何か物悲しい気持ちにさせられました。最初の最初からこのラストへと繋がる伏線を蒔いていたわけで、作者のアルテ氏には本当に感服。


これは良作