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最後から二番目の真実

主にミステリの感想

少年は探偵を夢見る -芦辺拓

少年の日、妖しいキネオラマにて怪人と名探偵に出会った森江春策。中学生となった彼は、「存在しない13号室」のあるアパートで起きた殺人事件を解決し、大学時代には、二都で起きた怪死を繋ぐ意外な真相を看破する。その後新聞記者となり、廃墟ホテルで発見された生首にまつわる冒険を経て、弁護士に転身した森江春策が対決するのは、タイムマシンでアリバイを築いたと主張する殺人者!名探偵・森江春策の軌跡を描く傑作ミステリ五編。「年譜・森江春策事件簿」を特別収録。(amazonより引用)

「少年はキネオラマの夢を見る」
懐古趣味的な「夕暮れの町と怪人、颯爽と現れる名探偵」。この趣味が好きならば文句なく楽しめるだろうが、作者もこの趣味が好きなせいか少々筆が滑り気味で読みづらい。とはいえ自分もこういった「探偵と怪人」は好きなのでOKOK。

「幽鬼魔荘と13号室の謎」
黒死館的なペダンティックな書き出しと非常に複雑で混乱しやすいトリックのせいで中々読みづらい。部屋入れ換えのトリックは複雑ながらも面白い。作品作りの裏側が見えるようなトリックなので作家志望の人はこの短編を解剖するとプロの考えがわかるかも、と偉そうなことを書いたが、実際この作品の作り方は面白い。

部屋の入れ替えトリックから語り手の部屋位置が決まり、そこに森江春策を入れるとあの位置へ、そこから犯人の位置を決めて一ひねりのお話を付け加えると、といった感じ。

「滝警部補自身の事件」
今までとは違ったシンプルで仮説に仮説を重ねた推論が面白い。最後に2つの事件が重なるところで切ったのは良い判断。「殺人喜劇の13人」を読んでいるとセンチメンタルな気持ちになる

「街角の断頭台」
トリックよりもそれを如何に見せるかにこだわっている。トリック自体は結構ショボイがそれをギロチンと結びつける発想に脱帽

「時空を征服した男」
SFのガジェットを入れ込んだように見えるが、実際は現実的に解かれる。この不思議な味わいは面白い。これをもっと突き詰めていって「西澤作品的なSFガジェットが出てくるけどそんなもの利用しなくても常識的に解ける」作品が読みたくなってくる。芦辺先生お願いします

満足度高し