最後から二番目の真実

主にミステリの感想

貴族探偵 -麻耶雄嵩

貴族探偵

貴族探偵

本格愛好家へ贈る、ディテクティブ・ミステリーの傑作!!

自らは推理をしない「貴族」探偵、登場。

推理などという〈雑事〉はすべて、使用人任せ…。
「趣味」探偵の謎の青年が、生真面目な執事や可愛いメイド、巨漢の運転手などを使い、難事件を解決する。
知的スリルに満ちた本格ミステリー!

麻耶雄嵩5年ぶりの最新刊。


――著者コメント――

『貴族探偵』は一作目から足かけ十年を要して完成した短編集です。
十年の間に本格ミステリーに対する作者の考えや嗜好もいくらか変わり、結果的に様々な傾向を持った作品集になりました。
そんな変わった部分、逆に何も変わっていない部分を楽しんでいただけたらと思います。


――巽昌章氏書評より――

人形芝居がただ人の所作の模倣にすぎないのなら、そんなものはとうに滅びていただろう。
私たちがいまなお人形たちの動きに惹きつけられるのは、彼らの「人間そっくり」な演技につきまとうカクカクしたぎこちなさが、
そこで描かれている悲喜劇をいったん突き放し、抽象化してしまう力を秘めていればこそである。
麻耶雄嵩の小説にはいつも、そんな人形芝居を思わせる抽象性の魅力が横溢している。(amazonより引用)

相も変わらずの破壊力

「蛍」の時も、「神様ゲーム」の時も「遠くで瑠璃鳥の啼く声が聞こえる」も、そもそもデビュー作の「翼ある闇」の時も麻耶雄嵩は破壊的だった。そして今回も破壊的、しかし今までに無いほど静か。


何を破壊したのか、についてはまた今度書くつもりなので今回はごく普通の感想、本格ミステリ的な部分だけに焦点を当てて書く

・ウィーンの森の物語
「失敗した密室」という所から倒叙ミステリ的なひっくり返しが楽しい。貴族探偵の初お目見えの初々しさも楽しめる。今回のどの短編にも言えるが数少ない条件から犯人を絞り込む手際はお見事。

・トリッチ・トラッチ・ポルカ
意外に普通のミステリ。といっても表象的な部分が普通というだけで使われているトリックや伏線の妙はかなりのハイレベル。と、ほめているけども人間が書けてなさ過ぎるのどうか。

・こうもり
ネタバレ気味に書くと「蛍」の派生系のトリック。つまり「麻耶雄嵩は人間が書けていない」事を逆手に取っているので見事にだまされました。が、2匹目のドジョウに高得点はだせんねぇ

・加速度円舞曲
何もするまもなく犯人は逮捕されてしまう。長編に向かない作家、麻耶雄嵩の本領発揮。面白すぎる。

・春の声
今回の白眉。これのすごさは後々書きたいと思うがミステリの構造を裏返した傑作。確実に飛び抜けている。21世紀のミステリの代表作にしていい