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最後から二番目の真実

主にミステリの感想

写楽 閉じた国の幻 -島田荘司

わずか十ヶ月間の活躍、突然の消息不明。写楽を知る同時代の絵師、板元の不可解な沈黙。錯綜する諸説、乱立する矛盾。歴史の点と線をつなぎ浮上する謎の言葉「命須照」、見過ごされてきた「日記」、辿りついた古びた墓石。史実と虚構のモザイクが完成する時、美術史上最大の迷宮事件の「真犯人」が姿を現す。(amazonより引用)

写楽、10ヶ月間で突然スタートなり消えていった不世出の画家。彼の正体は果たして「写楽」なのかそれとも他の誰かなのか。

この魅力的な謎。それも200年以上明かされない謎に、島田荘司が取り組む。彼の持つ「幻想的な謎と合理的な解決」メソッドが写楽の謎を切ればこれほど面白い物語に変身する。改めて現代ミステリの巨人のすごさを思い知った。しかも、強烈ながらも理路整然とした「写楽別人説」を読まされては「このミス」2位は伊達ではないと思わざるを得ない。

島田氏提唱の「写楽=XX説」はそのタイミング(あの時期に江戸にいなければいけない)にドンぴしゃのタイミングで江戸にいること、歌麿の描き残し(日本を俺が背負って立つ宣言)、関係者が誰も写楽の正体に触れていない点、当時の他の浮世絵師と少しも似ていない点、これらをすべて説明する素晴らしい仮説だ。それを(おそらく)島田氏が辿った検証の道筋を追っていくことで自分含め読者が島田氏の興奮を仮想的に味わえる。これこそミステリの持つ楽しみ。暗闇を辿り行き着く先に明る過ぎるご褒美がある。解放によるカタルシス=根源的な喜びを読者が味わえるように組み立てられたエンターテイメント。面白い!

一方で、現実の事件が何も解決されていないこと。今回の仮説があくまで仮説に過ぎない(可能性の提示をしたところで今回は止まっている!)ことを考えると「写楽2」への期待が高まる。

失礼ながら老いて尚この高レベルな作品を書き上げていること。後進の育成への情熱。そして変化し続けながらリーダビリティを失わない文体。どれも今現在一流であり、出来た人であることを感じさせる。


この作品も、その優しさと諦めないバイタリティの産物であると感じる。
傑作!