最後から二番目の真実

主にミステリの感想

アルバトロスは羽ばたかない -七河迦南

児童養護施設・七海学園に勤めて三年目の保育士・北沢春菜は、多忙な仕事に追われながらも、学園の日常に起きる不可思議な事件の解明に励んでいる。そんな慌ただしい日々に、学園の少年少女が通う高校の文化祭の日に起きた、校舎屋上からの転落事件が影を落とす。警察の見解通り、これは単なる「不慮の事故」なのか?だが、この件に先立つ春から晩秋にかけて春菜が奔走した、学園の子どもたちに関わる四つの事件に、意外な真相に繋がる重要な手掛かりが隠されていた。鮎川哲也賞作家が描く、季節を彩る五つの謎。『七つの海を照らす星』に続く、清新な本格ミステリ。(amazonより引用)

 ラストはなるほど、ひねっている。プロローグからエピローグまで墜落事件を追いながら、季節季節の出来事を思い出し、短編を挟んでいくという形もこのエピローグのためには必要だと思わせる説得力が出ている。

 特に短編の出来は王道を歩みながら(晩秋の章 -それは光速より速く-は特に)、一つ読者の意表をつく形でサプライズを用意している。定番の楽しみと意外性の楽しみ、プラス児童養護施設をとりまく人々の繊細さと暖かさがこの物語の読みどころ。作者の七河氏の良いところはこういった物語や人の多面的な部分を描ける点にあると思う。

 一方でどうにも優しすぎる部分が目についてしまう。どの人もみんな「いい人」であり、何かを大切にしようとする人たちばかりなのが気になる。どの登場人物も一人の人間の写し身のような感覚を覚えてしまう。
 たとえば、鷺宮瞭の人物造形。この人物の造形こそこの物語の肝だと思うが、最後まで読んでも薄皮一枚を挟んだようなはっきりしない印象のままだった。冬の章Ⅵまでその本心を隠す必要があるのはわかるが、肝心のその章で、瞭の精神に変化が生じるため違和感が拭えなかった。

 と、悪い面も感じる物のそれでも作者の力量を感じる作品だと思う。回文が減っているのは残念で、新人としての情熱的な部分が早くもなくなっているように見えるのが悲しいが、それでも面白いことにはかわりがない。回文にこらなければ情熱がないわけでもないしね。