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最後から二番目の真実

主にミステリの感想

黒い山 -レックス・スタウト 宇野輝雄訳

突然の悲報だった。ネロ・ウルフの親友で、レストランのオーナーであるマルコが、自分の店の前の路上で何者かに射殺されたのだ。動揺するウルフに追い打ちをかけたのは、ウルフの養女となっていたカルラだった。彼女は事件の背後にモンテネグロの民族運動があると示唆し、かつて運動への支援要請を断わったウルフを糾弾したのだ。断固として彼女の言を退けたウルフだったが、数日後に姿を消したカルラが現地で殺害されたと聞くや、重い腰を上げ、自らの故郷でもある、鉄のカーテンの彼方、モンテネグロへと乗り込んだ! シリーズ最大の異色作、最新訳で登場(amazonより引用)

かっこよすぎる。動かない「巨山」ネロ・ウルフが動き出し、鉄のカーテンの向こうモンテネグロまで犯人を追いかける。このシチュエーションにテンションがまず、上がる。ウルフは変わらずエゴイスティックな言動だけども、今回は(も?)その奥に人情を隠しているような雰囲気がハードボイルドな感じ。

アーチーは言葉も通じないモンテネグロで変わらず軽口をたたく。これには英語が苦手な自分も勇気づけられる。言葉は通じなくても心は通じる。ビジネスでそれは困るけども、それでも言葉だけが言語ではないんだよなぁ。

そして何より作者の心意気を感じるのが、親友殺しの犯人をアメリカまで連れ帰って裁判を受けさせようとするところ。民主主義のなんたるか、人の権利とは何か。個人的な復讐と公的な裁判、その依って立つところの違いは何か。自己自立の国、アメリカの作家らしい描き方に納得しました。

異色作ながら、やはりネロ・ウルフらしいかっこよさ。面白い