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最後から二番目の真実

主にミステリの感想

浮遊封館 -門前典之

異形の論理をたずさえて、沈黙を破った鮎川賞受賞作家の傑作長編!
飛行機墜落事故で消えた130人の遺体。
「密室」で口から剣を刺されて死んだ男。
次々に人が消えていく宗教施設。
身元不明死体を集める男――やがて浮かび上がる異形の論理。(amazonより引用)

そういえばこういったトリックを前面に押し出した作品は少なくなったなぁ。新人も綺麗でこなれた文章を書く人が多いし、トリックも発想の大きさよりも丁寧な作り込んだものが多い気がする。

そんな事を対比的に考えるほど、この作品はトリック一本槍。探偵のキャラは立っていない。ワトソンのキャラも立っていない。犯人のキャラも立っていない。登場人物の誰一人書き割り以上のものになっていない。しかし、異形の論理の元行われる「消失トリック」は、その異常さ故に却って現実味を増している。「密室殺人ゲーム」のような「こういうイかれたやつがいてもおかしくない」雰囲気をこのトリックは生み出している。

消失の理由、トリックは多くの読者にはバレバレも良いところだろう。(一方で雪密室の方は結構面白い出来だと思う)しかし、バレバレ故に異常さが際立つ。こんな発想しても、実行するやつはいない。誰だって考えるが21世紀も10年を過ぎた今、そんやついるかもしれない。そう思ってしまうほど現実は荒唐無稽なフィクションに近づいている。

そう考えるとこの作品の異形の論理にせよ、匿名的な書き割り人物たちも21世紀を表す良き小説かもしれない。

個人的には好きです。