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最後から二番目の真実

主にミステリの感想

武家屋敷の殺人 -小島正樹

探偵役は、若き弁護士とリバーカヤック仲間のフリーター。孤児院育ちの美女が生家探しを弁護士に依頼に来て、手がかりは捨てられたときに残された日記くらいだと言う。具体的な地名はいっさい出てこない代わりに、20年前の殺人と蘇るミイラの謎が書かれた日記をもとに調べ当てると、思わぬ新たな殺人が起こる。最後のどんでん返しまで、目が離せないジェットコースター新感覚ミステリー。(amazonより引用)

いやー地味だね。小ネタを数多く入れるスタイルは好きなんだけど、タイトルといい、登場人物といい、展開といい、新本格の教科書を元に一冊仕上げた学生の卒業制作のような内容にあまり素直に面白いとは言えない。

何せ、全てが明らかになっても良くわからない点が多い。
・なぜ、どうして子供を捨てたのか
・なぜ、ここまでトリックを仕込んだのか
・なぜ、(作品にとって)都合の良い日記が出来上がったのか
・なぜ、そもそも主人公に依頼があったのか(普通弁護士に実家の捜索依頼はしないんじゃ)

小ネタは良い感じだと思う。あり得ない情景が全て現実に起きうるもので説明がつくのは何度読んでも、同種のネタを何度見ていたとしても面白い。とはいえ今回のネタは普通に説明が思いつくものばかりだし、実際に説明を聞いても「なぜそのような描写をしたのか」の部分に説得力がない(精神に異常をきたしつつ有ったとしても、あそこまで都合良く幻想的な日記になるものなのか?)。納得感が薄いんだよね。

主人公組がリバーカヤックが趣味なんだけど、この趣味の必然性も良くわからない。作者の趣味だというのは分かるけど、作品に特にプラスの作用を起こしていない。いらない設定としか思えない。今後生かされるとしても、なぜリバーカヤックなのか。作者のデビューのきっかけになった島田荘司氏の御手洗潔は占星術師としてデビューした。占星術師という不思議な職業、怠惰な生活も納得を生む設定になっているし、なぜ占星術師をやっているのか、そしてそこから謎を解く動機を語らせているのは上手かった。今回、探偵役は途中退場してしまうし、語り手が結構謎解きしてしまい役割分担が上手いとは言い切れない。

悪くはないけど、アマチュアの手すさびのような作品。今後化ける可能性はあると思う。