最後から二番目の真実

主にミステリの感想

生霊の如き重るもの -三津田信三

刀城言耶は、大学の先輩・谷生龍之介から、幼い頃疎開していた本宅での出来事を聞かされる。訥々と語られたのは、『生霊』=『ドッペルゲンガー』の謎だった。怪異譚に目がない言耶は、その当時龍之介が見たものが何だったのか、解明を始めるのだが…(「生霊の如き重るもの」)。表題作ほか4編を収録した、刀城言耶シリーズ短編集最新作。(amazonより引用)

・死霊の如き歩くもの
 目の前で、透明人間が歩いて行くように足跡が生まれる、という趣向が面白い。ただ、この情景を生むトリックはかなり気合いの入ったモノがくるだろうと期待すると肩すかしの謎解きがきて残念。ここは長編物にする気合いを持って作って欲しかった。(まぁ長編じゃないからそこまで作ってらんないとは思うけども)

 最後の怪談も取って付けた感がして残念。いっそのこと登場人物の一人が死霊だった、では行けなかったのだろうか?

・天魔の如き跳ぶもの
 子供がすっ飛んでいくトリックはなかなか面白い。隠し場所といい、結構な佳作ではないだろうか?気むずかしいお爺さんがやけに気さくになる辺りもロジックが働いていて良い感じ。しかし、阿武隈川先輩のキャラは短編で生きるな。

 足跡モノがこれで2編目。何個かトリックを考えたのだろうか?

・屍蝋の如き滴るもの
 もはや妖怪ですらない気がする「屍蝋」。足跡のない殺人は誰もが一度は考えつくがどう考えても成立しないトリックを使用している。だが、その成立性を生むロジックが少々特殊で面白いが、やはり厳しい。

・生霊の如き重るもの
 ドッペルゲンガーというか、犬神家じゃねぇか。と思わず言いたくなる状況。不自然な状態はこの作品ではマイナス要素にしかならないなぁ。トリックはいやいや無理でしょ、と言いたくなる物。あんまり面白くはない

・顔無の如き攫うもの
 この短編集の白眉。何より面白いのは時代性がトリックに結びつくこと。長屋の持つ微妙な貧しさや、その中での階級意識、どれも何か懐かしい。その懐かしさの中にトリックが入っているのが面白い。

 消失物の楽しさが篭もっていて良かった。