最後から二番目の真実

主にミステリの感想

五色の雲 -ロバ-ト・ファン・ヒューリック 和爾桃子訳

西暦七世紀も半ばすぎ。大唐帝国の天下統一から早くも半世紀が過ぎ、戦乱の記憶はうすれ民心もようやく定まったちょうどそのころ、最初の任地に向かう県知事がいた。その名も名高きディー判事。その赴くところ、怪奇も怪異もたちどころに喝破され、難事件もその真相を露わにし、下手人たちはおそれいる―各地を歴任しつつ、不可能犯罪、密室殺人、アリバイ崩しさらには人情あふれる巷の小事件にまで、推理に辣腕をふるう名探偵の鬼神のごとき大活躍。腕利きの部下や夫人たちまで、判事一家の名脇役たちも勢揃いの興趣に富んだ傑作八篇を収録。(amazonより引用)

「五色の雲」


「赤い紐」
本格らしい本格。如何に密室殺人をなしたか、をシンプルに描き出す。この短さでこの切れ味なら文句はないだろう。密室で遠くから射られたとしか思えない殺人が起き、窓の先には容疑者がいた。この典型的な状況を突き崩す様は現代物でも十分通じる。

「鶯鶯の恋人」
第3夫人を迎えるかどうかで悩む判事を後押しするかのように、唖の少女が目撃者となる殺人事件が起きる。彼女には思ってくれる男性がいたのだ。というわけで人情物の要素が大きい作品。

「青蛙」
蛙が鳴いたがために真相を暴かれる、という短編。タイトル通り思わせぶりに蛙が鳴くのでもうほとんど倒叙物のような読み味。

「化生燈」

「すりかえ」
剣を使った大道芸の最中に刺殺される事件が発生。タイトルの通りすり替えがいつ行われたのかが眼目。

「西沙の柩」
ディー判事の「知事」としての側面が描かれる短編。異民族の侵入に手を打たねばならないなか持ち上がるスパイ疑惑。うーん、シリーズにはないどきどきが良いぞ。

「小宝」
プロットで読ませる佳作。個人的に一番好き。西洋ではこういった良い話は時期的にクリスマスを舞台にするのだろうが、中国だけに年末年始が舞台。父母のすれ違いの果てに起きた殺人と見せかけて非常に良い話。