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最後から二番目の真実

主にミステリの感想

裸者と裸者 愚者と愚者 覇者と覇者 -打海文三

裸者と裸者〈上〉孤児部隊の世界永久戦争

裸者と裸者〈上〉孤児部隊の世界永久戦争

裸者と裸者〈下〉邪悪な許しがたい異端の

裸者と裸者〈下〉邪悪な許しがたい異端の

愚者と愚者 (上) 野蛮な飢えた神々の叛乱

愚者と愚者 (上) 野蛮な飢えた神々の叛乱

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金融システムの崩壊と経済恐慌と財政破綻があった。打ちのめされた貧しい階層、社会的弱者、出稼ぎ外国人、市場競争の敗北者の群が路上に放り出された。海の向こうでも悪夢が現実のものとなる。中国の中央政権が倒されて、各軍管区が覇を競い、二自治区が独立を宣言。またほぼ同時期に、ロシアではサハリン油田の富を背景に極東シベリア共和国が誕生し、一気に大動乱の時代が到来した。戦禍に苦しむ大陸の民が、日本を平和で裕福な社会と見なして海を越え始めた。国軍は領海に入った難民の船をつぎつぎと撃沈した。それでも大量の難民が砲火をかいくぐって沿岸に漂着した。食糧暴動が頻発して治安の悪化は極限に達した。応化二年二月十一日未明、「救国」をかかげる佐官グループが第一空挺団と第三十二普通科連隊を率いて首都を制圧。それに呼応して、全国の基地で佐官が率いる部隊が将官の拘束を試みた。小戦闘、処刑、新しい司令官の擁立があった。同日正午、首都の反乱軍はTV放送とインターネットを通じて「救国臨時政府樹立」を宣言。国軍は政府軍と反乱軍に二分した。ゆるやかに破滅へと向かう、世界と日本を予言する、大問題作。 

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内乱が勃発した日本で少年少女たちが生きていく、その様子を描いた作品。覇者と覇者の途中で未完となってしまったが、それでも最後まで読んで希望のようなものを感じるのは、とても幸せだ。

 

生きていくために戦争に参加し、生きていくために人を殺す。愛を誓おうが、信念を持とうが銃は当たるし、人は死ぬ。漫画のように都合良くは行かないし、現実のように奇跡的な事態は起きない。作者の筆一つで登場人物たちは翻弄される。

 

戦争文学では人の強さを感じることが多いが、この作品でも確かに強さを感じる。哀れむことが優しさではないし、無関心であることが悪でもない。現実が非情だとしても人は優しい。

 

生きることは美しくないが、生きようとすることは美しい。