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最後から二番目の真実

主にミステリの感想

負け犬 -マイクル・Z・リューイン 石田善彦 訳

わたしの名前はジャン・モロ。定職も家もないので、世間ではホームレスと呼ぶが、これでも独立営業の立派なビジネスマンだ。仕事柄、町を歩き回っていると、よく厄介ごとに巻き込まれる。つい最近も、寝ぐらにしている空き地で、何匹もの子犬を虐待している径しい男たちを目撃した。警察に話しても取り合ってもらえなかったが、数日後、今度は町の有力者ビリー・シグラが経営する酒場で、空き地にいた男とビリーが密談しているのを目にした。なんでもビリーは、南米で強盗を働き巨万の富を築いたという話だ。その上、酒場には謎の美女や、得体の知れない男たちが出入りしており、不穏な空気が漂っていた。彼らの動きを探るうち、わたしはいつしか子犬をめぐる奇妙な事件の渦中に…。心優しいホームレスが路上生活で得た知恵とユーモアを武器に大活躍。私立探偵サムスン・シリーズ、パウダー警部補シリーズで人気の著者が新境地を拓く話題作。(amazonより引用)

精神的な貴族とは彼のような人を指すのだろう。たとえホームレスで家がなくとも、誇りを失わず、滑稽に見えようとも自分がすべきことを考え、実行する。それだけのことがどれだけ難しく、またどれだけ素晴らしいことか。

もちろんこの作品はミステリで有り、ハードボイルドのような男らしさもある。意外なつながりや他のシリーズのキャラも登場する。リューインのファンでもそうでなくても面白いミステリ田と思う。

しかし、そうだとしても私としてはこの作品を精神的な美しさを描いた作品だと言いたい。主人公のモロは決して利口とは言えない、正直だが腕っ節はない。余りに短絡的に物事をとらえるし、言っていることは支離滅裂だったりする。それでも彼が気高い聖人のように感じられるのはその正直さと誠実さ、自分で考え行動する男らしさにあると思う。

つまり、この作品は人生の指南書なのだ。