読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

最後から二番目の真実

主にミステリの感想

時の審廷 -芦辺拓

 

時の審廷

時の審廷

 

 「ミステリ―の達人」が、大絶賛!


驚きの超-社会派本格探偵小説。奇想、ここに極まれり。――有栖川有栖

時代の深層に秘されたロマンを解く、壮麗なるミステリ―だ!――ときわ書房本店 宇田川拓也氏

本格ミステリ・ベスト10 第2位 
週刊文春ミステリ―ベスト10 第8位 
傑作「時の密室」から12年――。「時」シリーズが甦った!

戦前のハルビン、戦後の日本、そして現代――。
数多くの謎に満ちた事件が起こり、交錯するとき、
日本を震撼させる出来事が明かされる!

盤石の地位を保ってきた政権党から第二党への初めての政権交代なるかが
注目された総選挙の投開票日に、大地震発生の報が。
同日、弁護士兼探偵の森江春策に「日本分断」と告げる謎の電話があった。
一方、昭和24年。大量殺人事件・大都銀行事件の取材にいそしむ
仮名文字新聞記者の和智雄平にも、
戦前に赴任したハルビンの知人から「日本分断」という電話が――。

 「時」シリーズ三作目だが、前二作とは趣の異なる作品。おそらくはインターネットが発達し、誰もがそこで色々な事を語るようになってきたこと、特に政治についてはインターネット以前とは違う雰囲気の人が多く見かけるようになったことと関連があるのだろう。

 

その違和感を、戦前のハルビンないし政権交代前夜の日本とつなげる腕力、物語を作る腕力は芦辺氏ならではの力技で非常におもしろい。戦前からのロマンスをスパイスに、ネットで語られる「プリンス」のもろさや危うさ、また現実的にインターネットが実際の行動とつながっていく過程は本当に面白い。

 

一方でミステリとしての謎解きや手がかりの残し方などははっきり言えば普通であり、この作者に求めるレベルからすると程度が低い。とはいえそれは芦辺氏の今まで残してきた作品のレベルの高さから比べると、でありこの作品単体で見るとごく真っ当に仕上げられている。

 

 つまり、ミステリとしては普通。しかし物語としては一級。