読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

最後から二番目の真実

主にミステリの感想

空耳の森 -七河迦南

 

空耳の森 (ミステリ・フロンティア)

空耳の森 (ミステリ・フロンティア)

 

 まだ早い春の日、思い出の山を登るひと組の男女。だが女は途中で足を挫き、つかの間別行動をとった男を突然の吹雪が襲う。そして、山小屋でひとり動けない女に忍び寄る黒い影―山岳を舞台にした緊迫のサスペンス「冷たいホットライン」。孤島に置き去りにされた幼い姉弟の運命を描く「アイランド」。ある不良少女にかけられた強盗の冤罪をはらすため、幼なじみの少年探偵が奔走する「さよならシンデレラ」。居酒屋で男が安楽椅子探偵に遭遇する「晴れたらいいな、あるいは九時だと遅すぎる(かもしれない)」…『アルバトロスは羽ばたかない』で一躍注目を浴びた鮎川哲也賞受賞作家の本領発揮。一編一編に凝らされた職人的技巧に感嘆すること間違いなしの、バラエティに富んだ九編を収める。

 一つ一つの短編はそれ自体でもなかなか良い。「冷たいホットライン」が初っぱななのもこの短編集の方向性を表している。つまり本格ミステリの短編に求める切れ味の良い解決が味わえる。

 

 一方で途中から短編一つでは話が閉じなくなってくる。一つ一つは話に区切りがつくのだがそれでも、登場人物の人生は続いていく、と言わんばかりにあちらコチラで物語がつながっていく。これは個人的には微妙だなぁ。その後は読者の想像にゆだねられている方が好きだね。

 

 個人的な好き嫌いは別とすると、真っ当に作られた、真っ当な短編集。おすすめ。