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最後から二番目の真実

主にミステリの感想

時の娘 -ジョセフィン・テイ 小泉喜美子 訳

 

時の娘 (ハヤカワ・ミステリ文庫 51-1)

時の娘 (ハヤカワ・ミステリ文庫 51-1)

 

 

国史上最も悪名高い王、リチャード三世——彼は本当に残虐非道を尽した悪人だったのか? 退屈な入院生活を送るグラント警部はつれづれなるままに歴史書をひもとき、純粋に文献のみからリチャード王の素顔を推理する。安楽椅子探偵ならぬベッド探偵登場。探偵小説史上に燦然と輝く歴史ミステリ不朽の名作。

  はっきりと言うとリチャード三世の人となりを知っている日本人はどの程度いるのだろう。彼が残虐非道の人であり、そのエピソードを知っている人はきっとすくないのではないか。しかし、そういった部分は百も承知で、それでも面白い。

 

 私はリチャード三世を知らなかったが(薔薇戦争などは名前しか知らない)、読むにつれてグラント警部と同様にリチャード三世がどういった人物かは分かってくる。究極的には王子を殺したから最悪の王という扱いを受けている。しかし、現在の私たちからすればいささか牧歌的とも言える理由ではないか。グラント警部が言うように、夕方になれば三々五々解散するような「戦争」をしていたころの話ではないか。

 

 そうするとそもそも彼の悪評に同情したくなるが、それでも王子殺しは良くはない。結果的に彼の悪評は覆されるのだがその過程もドラマチック。「史実」とされるものを少しづつ集めて彼の悪評の原因を洗い出していく。そうすると悪評の原因となるモノが彼に敵対する人達によって作られていることが分かってくる。

 

 これを元に高木彬光が「成吉思汗の謎」を書いたと言うが、なるほど作家ならばこの作品に大きくやる気を出させてくれるだろう。それほど面白い作品。