最後から二番目の真実

主にミステリの感想

グリーン家殺人事件 ーヴァン・ダイン 井上勇訳

 

グリーン家殺人事件 (創元推理文庫 103-3)

グリーン家殺人事件 (創元推理文庫 103-3)

 

 ニューヨークのどまんなかにとり残された前世紀の古邸グリーン家で、二人の娘が射たれるという惨劇がもちあがった。この事件をかわきりに、一家のみな殺しを企てる姿なき殺人者が跳梁する。神のごときファイロ・ヴァンス探偵にも、さすがに焦慮の色が加わった。一ダースにのぼる著者の作品中でも、一、二を争うといわれる超A級の名作。

  wikipediaによれば1928年に刊行されたとのこと。今から90年近く前に発表された作品を今でも日本語で読めるというのはありがたい。

 

古色蒼然としたグリーン家を舞台に、陰気な連続殺人事件をファイロ・ヴァンスが解く、という今では当たり前すぎる設定で書かれている。それでも時代を超えて読み継がれるのは、その今やオーソドックスとなった設定でもしっかり読ませる描写であり、展開の巧みさゆえだろう。邸内で起きた殺人事件にうろたえる者、遠くへ引っ越す者、無関心な者、多くの反応があり、それによって新しい展開が生まれる。

 

現代のミステリですら、こういった多くの反応を描ききれない、紋切り型の描写をする者も多い中で、この作品が持つ意義は大きい。